アイスについて - 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アイスクリーム(英: ice cream)は、牛乳などを原料にして、冷やしながら空気を含むように攪拌してクリーム状とし、これを凍らせた菓子である。そのうち、柔らかいものは「ソフトクリーム」と呼ばれる。後述する通り、国によっては「アイスクリーム」製品の規格を規定する場合がある。例えば日本では乳固形分及び乳脂肪分が最も高いアイスクリームと、アイスミルク、ラクトアイスの3種類を合わせて広義に「アイスクリーム類」と称す。歴史[編集]起源[編集]乳製品を天然の氷や雪で冷やして食べる習慣は紀元前より見られた。すでに殷の時代の中国や古代エジプトにはシャーベットのような冷菓が存在した[3]。ユリウス・カエサルやアレクサンドロス3世(大王)は乳や蜜に氷や雪を加えて飲んだという話が伝わっている。また、もともとは3000年以上前に中国で作られた菓子であるとマルコ・ポーロは伝えている。彼が中国で乳を凍らせたものを食べ、その製法をイタリアに伝えたという話もある。16世紀初頭にパドヴァ大学の教授だったマルク・アントニウス・ジマラが常温の水に多量の硝石を溶かすと溶解熱により吸熱反応を示し、水の温度を下げることができることを発見した[3]。また16世紀中ごろにはベルナルド・ブオンタレンティ(Bernardo Buontalenti, 1536年 - 1608年)が氷に硝石を加えることで-20℃程度まで温度が下がることを発見した。この原理を利用することで雪や氷を使用しなくてもシャーベットのような食品を人工的に凍結させることが可能となった[3]。もちろんその水溶液から硝石は何度でも回収できる。現在のアイスクリームの原型は16世紀中ごろ、フィレンツェでブオンタレンティがメディチ家のために創作したセミフレッドのズコットとされている。フランスのオルレアン侯アンリ(後のアンリ2世)に嫁いだメディチ家の カテリーナ・デ・メディチ(Caterina de' Medici, 仏名:カトリーヌ・ド・メディシス(Catherine de Médicis)、1519年 - 1589年)が、菓子職人とともにフランスに持ち込んだとも言われる。しかし、ニューヨーク大学のローラ・ワイスは、この話には根拠がないと述べている[4]。1686年シチリア出身のフランチェスコ・プロコピオ・ディ・コルテッリ(仏名フランソワ・プロコープ)がパリでカフェ「ル・プロコープ」を開店し、1720年、シチリアの氷菓グラニータをアレンジしたグラス・ア・ラ・シャンティ(glace à la chantilly)を売り出した。これはホイップクリームを凍らせた氷菓であったが、アイスクリームの商業的成功の最初の例と見なされている。イギリスには1624年、カトリーヌの孫アンリエット・マリーがチャールズ1世(1625年 - 1649年)の元に嫁いだときにジェラート(アイスクリーム)職人を伴い伝わったと言われる。チャールズ1世の宴会でフランスの料理人ド・ミレオによって作られ大いに賞揚されたという。チャールズ1世は、アイスクリームの製法を秘密にし、王にだけアイスクリームを提供する見返りに、アイスクリーム職人に一生年金を与えたという伝説がある。しかし、この逸話は19世紀以前の文献には現れず、アイスクリーム売りによる創作とされている。なお、この時代になってもアイスクリームはまだ乳製品をほとんど使用しておらず、代わりにメレンゲを使用したシャーベットに近いものであった。
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